抗VEGF薬治療とは?
抗VEGF療法とは、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈塞栓症、病的近視などに対する治療法の1つです。
脈絡膜の新生血管は、体内のVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor=血管内皮増殖因子)によって成長します。抗VEGF療法では、このVEGFに対する抗体を目に注射することで、新生血管の成長を抑制し、加齢黄斑変性、病的近視の症状改善を図ります。
また、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症に対しては、血液成分の漏れを抑える作用により、黄斑部のむくみを改善することで、症状の改善が期待できます。
加齢黄斑変性に対する抗VEGF療法について
加齢黄斑変性は、主に新生血管からの出血を原因として網膜がダメージを受け、視力が低下する病気です。従来の治療法ではなかなか視機能改善、視力改善が得られませんでしたが、近年は光線力学療法(PDT)や抗VEGF療法など、視機能の改善が期待できる治療が登場しています。
中でも、当院で使用する抗VEGF薬「ルセンティス・アイリーア」は、高い確率で視機能の改善が期待できます。
当院では、3D-OCT(光干渉網膜断層撮影)やFAG(蛍光眼底造影検査)といった検査で網膜内の構造を詳しく調べ、患者さんの病態にとって最適となる治療の提案に努めています。
またVEGF療法に限らず、国内外の文献を参考に、最新の情報を患者さんに提供し、病態・治療の内容の理解を深めていただくことを第一に考えております。不安・疑問に思うことがあれば、何でもお尋ねください。
抗VEGF治療の適応疾患
加齢黄斑変性症
主に加齢を原因として、網膜の中心にある黄斑が新生血管によって障害され、視力が低下する病気です。
主な症状として、物が歪んで見える、視野の中心が暗くなる・欠けるといったものが挙げられます。また、進行性の病気であり、放置すると最悪の場合には失明します。
糖尿病網膜症
糖尿病を原因として、網膜の血管の詰まり、出血などが起こる病気です。網膜が障害されることで新生血管が作られますが、この新生血管は非常に脆く、破れやすくなっています。
初期はほぼ無症状ですが、進行すると物が歪んで見える、視野が暗くなる・かすむ、飛蚊症等の症状が出現します。また、適切な治療を行わずにいると、最悪の場合には失明します。
網膜静脈閉塞症
網膜の静脈が閉塞することで、血液が流れなくなる病気です。高血圧症との関係が深く、50歳以上の方に好発します。糖尿病網膜症と同様、眼底出血の原因になりやすい病気でもあります。また、黄斑浮腫の原因にもなります。
主な症状としては、目のかすみ、視力低下、視野の欠けなどが挙げられます。
病的近視
強度近視(-6.0D~)で眼軸が長いと、網膜・脈絡膜が引っ張られ、眼底組織にさまざまな障害が生じます。このように、眼底組織の異常を伴う強度近視のことを、病的近視と言います。眼底組織に負担がかかることで、新生血管が発生し、網膜の出血やむくみの原因となります。
続発緑内障
ぶどう膜炎、糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症など、他の眼科疾患、あるいは全身疾患などによって引き起こされる緑内障です。
視野の欠けや狭窄、低下などを伴いますが、反対側の目で視野が補われ、受診が遅れるケースが目立ちます。
抗VEGF治療の特徴と効果
抗VEGF療法には、体内のVEGFの働きを抑えて新生血管の成長を抑制する作用、血液成分の漏れを抑える作用があります。
①新生血管の成長を抑制する効果
主に、加齢黄斑変性、病的近視に対して有効となります。
②血液成分の漏れを抑える効果
主に、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症に対して有効となります。
効果の持続期間
抗VEGF療法の効果は、平均1~3ヶ月と一時的なものです。そのため、1~3ヶ月、または2~4ヶ月ごとに定期的に注射を行う必要があります。
症状や状態を見ながら、ひとりに合った治療の頻度をご提案いたします。
抗VEGF治療の流れ
1検査・診察
各検査、医師の診察を行い、抗VEGF療法の適応となるかどうかを判断します。
適応となり、患者さんに治療内容・費用等のご理解・ご同意をいただきましたら、治療日を決定します。
2治療3日前~
治療日の3日前から、感染予防のため、抗菌薬の点眼を開始します。
3ご来院・治療
メイクは落としてご来院ください。
ご来院後、点眼麻酔をかけ、抗VEGF療法を行います。痛みはほとんど感じません。
治療が終わり、問題なければお帰りいただけます。
4治療後の検診・追加の注射
治療後も、定期的にご来院いただきます。
効果の現れ方を見ながら、抗VEGF療法の追加を検討します。
抗VEGF治療の注意事項(副作用)
主な副作用、注意事項をご紹介します。
考えられる副作用
- 重大な副作用として、心筋梗塞・脳梗塞があります。心筋梗塞・脳梗塞の既往がある方はリスクが高くなるため、抗VEGF療法を受けられないことがあります。
- 目に現れる副作用としては、眼内炎、結膜下出血、一時的な眼圧上昇、白内障、網膜剥離、硝子体出血などがあります。感染性の眼内炎については、可能性は低いものの失明のリスクが伴います。
- 胎児への影響は明らかにされていないため、妊娠中・授乳中の方には抗VEGF療法は行いません。
抗VEGF治療後の注意点
抗VEGF療法の後には、以下の点にお気をつけください。
洗顔・入浴
治療当日は、洗顔をお控えください。目のまわりを避け、濡れたタオルで拭くようにしてください。
首から下のシャワーは、治療当日から可能です。ただし、お顔・目のまわりが濡れないようご注意ください。
また、お湯には浸からないでください。
メイク
感染のリスクがあるため、しばらくメイクはお控えください。
運転
車、バイク、自転車の運転は、医師の許可があるまでお控えください。
運動
激しい運動は、医師の許可があるまでお控えください。
点眼
治療後は、感染を防ぐための点眼薬を処方します。
感染は、最悪の場合失明に至る眼内炎のリスク因子となります。点眼薬を正しく使用し、また目のまわりの清潔を保つようにしてください。
抗VEGF治療の費用
抗VEGF療法には、保険が適用されます。ご負担額の目安は、以下の通りです。
3割負担の場合 | 2割負担の場合 | 1割負担の場合 | |
---|---|---|---|
ルセンティス | 40,000円 | 25,000円 | 13,000円 |
アイリーア | 45,000円 | 30,000円 | 15,000円 |
ベオビュ | 46,000円 | 30,000円 | 15,000円 |
バビースモ | 53,000円 | 35,000円 | 18,000円 |
ラニビズマブ | 30,000円 | 20,000円 | 10,000円 |